貨車の楽しみ方

~「新専貨」の提案~

 貨車の楽しみ方は千差万別。1両から好きなように繋げる気楽さがポイントです。しかし、考証を楽しむなら実際の編成に対する理解が必要なことも事実です。T356Xでは、長編成も短編成も楽しめる遊び方として「新専貨」を提案します。


新専貨とは

 昨今、日本における鉄道貨物輸送の主役はコンテナである。荷主はコンテナを用意し、荷物を詰め、最寄の営業所に持ち込むことで列車輸送される。コンテナのなかった時代、荷主は貨車自体を借り、最寄の駅に呼び寄せて荷物を詰め、発送した。これを車扱という。これには車扱用の貨車や、貨車を目的地に振り分けるジャンクションとして大掛かりな操車場が必要だった。また、車扱及び操車場を用いた輸送形態をヤード系輸送と呼ぶ。

 1984年、貨物の輸送効率化を推し進めていた国鉄は、非効率的なヤード系輸送を廃止し、コンテナ専用列車及び末端のトラック輸送、あるいは単一品目の専用列車による荷主への直行輸送へと転換を図った。しかし化成品を筆頭に、安全上の問題からコンテナやトラック輸送への代替が進まない輸送品目も依然存在したため、一部の車扱は存続となった。しかし操車場は消滅したため、全国に存在する臨海鉄道のヤードも活用することで、従来のヤード系輸送を代替した。

 新専貨は、車扱を維持するために生まれた列車である。全国の拠点を渡り歩き、車扱用の貨車を増解結しながら全国の工場を結んだ。編成は化成品タンク車を始めとして、冷延コイルや鉄板、重油、石炭、セメントなど多岐に渡る専用貨車が連なった。その姿はヤード系輸送の全盛期を髣髴とさせる”デコボコ”な編成であり、ノスタルジックであると共にコンテナ専用列車とは一線を画す存在であった。

 新専貨の時代も長くは続かなかった。車扱用の貨車は雑多であり、メンテナンスにコストがかかる上に更新も殆どされず、車齢も高くなりつつあった。21世紀に入ると、需要変動に弱く、速度が遅く、速達性もないなどネガティブな面が目立つようになり、JR貨物は遂に新専貨の廃止を決断した。車扱は数々の障壁を乗り越え、段階的にコンテナ化が進められた。その結果、2008年3月のダイヤ改正をもって新専貨は消滅した。

 新専貨は潰えたが、化成品タンク車輸送は大牟田発のみ存続した。新専貨の面影を残す運用として人気を博したが、これも2009年12月をもってタンクコンテナへと転換され、日本における化学薬品タンク車輸送の歴史は幕を閉じた。最後の運用は大牟田-南延岡、タキ5450による液化塩素輸送であった。

編成例

3560/3561ㇾ 新潟(タ)-笠寺

新潟(タ)-米原間

 日本海縦貫線を征く運用です。新潟(タ)ー米原の区間では富山のEF81が担当し、富山や新潟を始めとする日本海側ユーザーからの化学薬品輸送が主でした。

編成例はこちら
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF81 富山 5 製品有
DE10 東新 1160 製品有
タキ5000 東北東ソー化学 塩酸 タキ7750 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ5450 日本石油輸送 液化塩素 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ5750 神岡鉱業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ46000 日本陸運産業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ46000 日本陸運産業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 神岡鉱業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ46000 日本陸運産業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ13800 内外輸送 アルコール タキ35000 ←改造
タキ13800 内外輸送 アルコール タキ35000 ←改造
タキ5750 伊藤忠商事 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ3700 日本石油輸送 酢酸 タキ3000 ←改造
2001.1.19 3560ㇾ

 

3560/3561ㇾ 新潟(タ)-笠寺

米原-笠寺間

 米原ー笠寺の区間では、2000年度の時点で岡山のEF65が担当となっていたようです。また、年度によっては新鶴見のEF65や吹田のEF66なども記録されています。チキ4750による厚鋼板輸送やトキ21500による冷延コイル鋼板輸送がみられるのも本列車の特徴でした。

編成例はこちら
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF65 岡山 124 製品有
タキ5450 東亞合成 液化塩素 製品有
タキ7750 東亞合成 苛性ソーダ 製品有
タキ10700 日産化学工業 希硝酸 タキ3000銀 T356Xキット
タキ8100 日産化学工業 希硝酸 タキ3000銀 T356Xキット
トキ25000 JRF 鋼板 製品有
トキ25000 JRF 鋼板 製品有
チキ4750 JRF 鋼板 チキ7000 ←改造
タキ18700 ダイセル 酢酸 タキ35000 ←改造
タキ8700 ダイセル 酢酸ビニル タキ35000 ←改造
タキ5450 日本曹達 液化塩素 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ26000 日本石油輸送 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
2000.11.25 3560ㇾ

 

3880/3881ㇾ 酒田-川崎貨物

川崎貨物-高崎(操)間

 首都圏と日本海側を結ぶ運用で、区間によって編成と牽引機が大きく変化するのも本列車の特徴です。また、川崎貨物ー高崎(操)の区間は年度によって牽引機が異なり、新鶴見、高崎のEF65、高崎のEF64が記録されています。

編成例はこちら
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF65 新鶴見 1096 製品有
タキ45000 キグナス石油 重油 タキ35000 ←改造
ホキ5700 チチブセメント セメント 製品有
タキ18600 日本陸運産業 液化アンモニア 製品有
タキ7500 日産化学工業 濃硝酸 タキ3000銀 T356Xキット
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ4000 伊藤忠商事 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ6250 神岡鉱業 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ300 東邦亜鉛 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 伊藤忠商事 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ45000 日本石油輸送 機械油 タキ35000 ←改造
タキ45000 日本石油輸送 機械油 タキ35000 ←改造
タキ45000 日本石油輸送 機械油 タキ35000 ←改造
トキ25000 JRF 車輪 製品有
2001.5.10 3880ㇾ
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF65 高崎 514 製品有
EF65 高崎 528(ムド) 製品有
タキ7250 内外輸送 アセトン タキ35000 ←改造
タキ7250 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ7250 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ5750 東邦亜鉛 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 東邦亜鉛 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
ホキ10000 チチブセメント 石炭 製品有
タキ4000 日鉱商事 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ7750 呉羽化学工業 苛性ソーダ 製品有
タキ5450 関西化成品輸送 液化塩素 製品有
タキ45000 日本石油輸送 機械油 タキ35000 ←改造
タキ7750 呉羽化学工業 苛性ソーダ 製品有
タキ29300 古河機械金属 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 同和鉱業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 伊藤忠商事 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
2001.1.19 3881ㇾ
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF64 高崎 1028 製品有
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ29100 日産化学工業 濃硝酸 タキ3000銀 T356Xキット
タキ7500 日産化学工業 濃硝酸 タキ3000銀 T356Xキット
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ23600 日本石油輸送 溶融硫黄 タキ3000 ←改造
タキ35000 日本石油輸送 ガソリン 製品有
タキ45000 キグナス石油 重油 タキ35000 ←改造
タキ7050 関東電化工業 パークロールエチレン タキ7750 ←改造
コキ104 JRF コンテナ 製品有
トキ25000 JRF 車輪 製品有
タキ45000 日本石油輸送 機械油 タキ35000 ←改造
タキ7750 早川商事 苛性ソーダ 製品有
2001.3.16 3881ㇾ

 

3880/3881ㇾ 酒田-川崎貨物

高崎(操)-新潟(タ)間

 高崎(操)ー新潟(タ)では上越国境超えの区間となり、高崎のEF64-1000が重連で担当しました。渋川や熊谷(タ)止まりの列車は解結されていますが、安中からの硫酸が加わります。

編成例はこちら
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF64 高崎 1035 製品有
EF64 高崎 1034 製品有
タキ7250 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ7250 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ4000 三谷産業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ3700 電気化学工業 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
コキ104 JRF コンテナ 製品有
コキ104 JRF コンテナ 製品有
コキ104 JRF コンテナ 製品有
コキ104 JRF コンテナ 製品有
タキ5750 東邦亜鉛 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 東邦亜鉛 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ7750 呉羽化学工業 苛性ソーダ 製品有
タキ19500 日本石油輸送 スチレンモノマー タキ35000 ←改造
2001.3.31 3881ㇾ

 

3880/3881ㇾ 酒田-川崎貨物

新潟(タ)-酒田間

 新潟(タ)-酒田の区間では長岡のEF81が担当します。中条へ向かう硫酸、メタノールやアンモニアが増結される一方で二本木、新井向けなどは解結されるため、編成の顔ぶれは一変します。

編成例はこちら
日付/編成 列車番号/釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF81 長岡 148 製品有
タキ7250 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ7950 内外輸送 メタノール タキ35000 ←改造
タキ4000 東邦亜鉛 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 伊藤忠商事 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5750 東邦亜鉛 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ4000 東邦亜鉛 濃硫酸及び発煙硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ7750 東北東ソー化学 苛性ソーダ 製品有
タキ5450 関西化成品輸送 液化塩素 製品有
タキ5450 関西化成品輸送 液化塩素 製品有
タキ5450 関西化成品輸送 液化塩素 製品有
2001.5.26 3881ㇾ

 

4380/4381ㇾ 黒井-二本木

 3880/3881ㇾ及び、3560/3561ㇾから継走される、新井及び二本木向けの短距離輸送です。

編成例はこちら
編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF64 高崎 1027 製品有
コキ5500 JRF コンテナ 製品有
コキ5500 JRF コンテナ 製品有
タキ5450 日本曹達 液化塩素 製品有
タキ18700 ダイセル 酢酸 タキ35000 ←改造
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ5450 日本石油輸送 液化塩素 製品有
タキ3700 ダイセル 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ3700 内外輸送 酢酸 タキ3000 ←改造
タキ9250 ダイセル アセトアルデヒド タキ3000 ←改造
タキ9800 日本石油輸送 重油 タキ9900 ←改造
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ25800 日本石油輸送 青化ソーダ タキ3000 ←改造
タキ11800 日本石油輸送 青化ソーダ タキ3000 ←改造
タキ4200 日本曹達 苛性ソーダ タキ7750 ←改造
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ4000 日産化学工業 濃硫酸 タキ7750 T356Xキット
タキ5450 日本曹達 液化塩素 製品有
タキ2600 日本曹達 苛性ソーダ タキ7750 T356Xキット
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
2000.7.21 4380ㇾ

短距離運転にも関わらずかなりの長編成となりますが、新井向けが運休となった際は短編成の場合もありました。

編成 釜番/積荷 ご家庭の貨車
で代用
完全再現を
目指すなら
EF64 高崎 1016 製品有
コキ5500 JRF コンテナ 製品有
コキ5500 JRF コンテナ 製品有
タキ22900 日本曹達 青化ソーダ タキ3000 T356Xキット
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
タキ7750 日本曹達 苛性ソーダ 製品有
2000.5.29 4381ㇾ

おわりに

 ここまでご覧いただき、ありがとうございました。貨車模型の楽しさが少しでも伝わったならば嬉しく思います。

実車写真協力:UNLSGTS